「スペシャルティコーヒーが特別じゃない未来へ」(後編) 京都出町柳、LIGHT UP COFFEE KYOTO店長の末さんが目指す理想のコーヒー屋。

コーヒーとの出会い

 

 

森本:末さんのコーヒーとの最初の出会いはなんだったんですか?

:もともと全然コーヒーは好きではなくて、パティシエを目指して料理学校に通っていました。いろいろある学科のうち、カフェ学科の中でコーヒーの話をしてくれる先生と出会って話しているうちにコーヒーのおもしろさを感じたんです。

パティシエを目指しているとき、「お菓子作りが好きだけど、お客さんのいないところで作ることに自分はやりがいを見つけられるかな」と考えていた時期があって。コーヒーなら淹れながらお客さんとお話しすることができますよね。それでコーヒーにどんどん引き込まれていったんです。だからコーヒーの仕事をスタートするときも、まずはコーヒーのある環境で人と接することを学びたいと、スタバで働いたんです。

森本:おいしいコーヒーを淹れる研究をするより、お客さんと関わることが末さんは好きなんですね。
そういえばこの前、サードウェイブ※1の次にフォースウェイブ※2の波が来ると言われていて、誰が淹れたコーヒーであるかが大事になってくるという話を読みました。
今後コーヒー業界はどんなふうになっていくんでしょうね。

:そこは自分自身も客観的にとらえながら見ていきたいと思っています。
今コーヒーが流行りものになってきている感覚はあって、その中で自分はコーヒーを仕事にしているけど、今のサードウェイブの波はどこかで止まるか、変わっていくような気がしています。
もし自分にとって嫌な方向に(コーヒー業界が)進んでいったら、自分はコーヒーから離れようとも思っています。

 

 

笹田:やりたいことってバリスタじゃなくても満たされたかもしれないですもんね。もしかしたらパティシエでもよかったかもしれないし。もう一つ先にある目的を達成するための手段って、実は何でも良かったりする。

:そうだね。当時の自分はお客さんと関わることがお菓子ではできないと思っていたからコーヒーを選んだけど、今思えばお菓子でもお客さんと話す時間を大事にするようなスタイルでできたかもしれない。
どんな仕事であれ、お客さんとの関わりはやっぱり僕は外せなくて。「おいしかったです」って言ってもらうのが今でも実は一番うれしかったりするんです。そういった日々の中の瞬間瞬間で心が動かされるのが僕は好きなんです。

笹田:コーヒー屋で一番うれしいのはやっぱりお客さんに喜んでもらえた瞬間ですよね。ドリップコーヒーだと見た目は変わらないし、お客さんに味わってもらってその反応で初めて、良かったかどうかがわかるから。

 

 

笹田:LIGHT UP COFFEE KYOTOのお店を今後どうしていきたいですか?末さんの理想と結び付けていきたい?

:京都店でしかできないことをやっていきたいね。
例えば店内にあるクラフトマロッキーノっていうアレンジドリンクは、京都にあるDari Kというチョコレート屋さんのチョコを使わせてもらっているんだけど、そんな風に京都の他のお店とコラボするのがひとつ。

他にはコーヒー以外の分野のイベントに出ていくようにして、コーヒーにあまり興味のない人が「こういうコーヒーもあるんだ」とコーヒーに興味を持ってもらえるようなことがしたい。例えば去年はインテリアのイベントに出店しました。
あとはさっきも言ったけど、日常に溶け込んだコーヒー屋を目指しています。

 

※1 サードウェーブとは、1990年代後半にかけて起きたコーヒー業界におけるムーブメントだ。2003年に設立されたSCAJ(ジャパンスペシャルティコーヒー協会)を皮切りに、シングルオリジンという単一農家、地域から取れたものを重視し、トレーサビリティやサステイナビリティ、そしてその豆の持つ風味特性を感じさせるようなコーヒーが注目を集めるようになった。

※2 フォースウェーブとは、今後起こり得るだろうムーブメントのことだ。海外では自動化の波が進み、人が行う抽出作業がAIに置き換わる流れが起きている。現在の有力な説では、その機械的な抽出によってその他の仕事に人間が注力できるようになる(接客など、日本人特有のおもてなし)らしい。もしくは、機械によって均一な味が抽出できるようになる時代だからこそ、誰がコーヒーを淹れるのかという個人にスポットが当たるのではないかとも予測されている。バリスタによる味の違いを明確に伝えられていなければ、”誰が淹れても同じような味”という一般的な認識になり、前者になるだろう。個人的な見解としては、コーヒーの味の違いにこだわりのない人は前者、味の違いを楽しむ人は後者という二極化の流れがフォースウェーブと呼ばれるのではないかと思っている。どちらにしても、スペシャルティであることは間違いないだろう。

 

 

プロ意識と親しみやすさ

 

森本:最後に、LIGHT UP COFFEE の他のコーヒー屋さんと違う魅力ってどんなところですか?

:まずは「コーヒーを伝えること」かな。すごくいいバリスタがいたりして、おいしいコーヒーを出している店は他にもたくさんあると思うんだけど・・・

笹田:頼んだコーヒーの情報が載ったカードを出している店って少ないですよね。
豆を買ったらついてくるお店はいくつか知っているけど、飲んだだけでついてくるのはなかなかないと思う。やっぱり透明性を重視していたり、背景も知ってもらいたいっていう、コーヒーを伝える意識はライトアップの魅力ですよね。

 

コーヒーの風味に合わせた色のカードを一緒に渡している

 

:そもそも帰り際に「お味どうでした?」って聞くお店が少ないんですよね。ただ、伝えたいと思うあまり知識に偏りすぎるのもよくないと思っていて、フレンドリーさも大切にしながらやっているところは、うちのすごくいいところだと思っています。

森本:それってLIGHT UPのスタッフだからなせる業だと思う。
末さん含め皆、やわらかい雰囲気の人たちだからこそ、飲んだあとで「お味どうしでした?」と聞かれたとき、お客さんは本音で答えることができると思うんですよね。そうじゃなかったら気を使ってしまって、実はそう思っていなくても「おいしかったです」って言って終わってしまうこともあると思う。
他のコーヒー屋では常連になったりしないような人がこの店で常連になるようなこともあるんじゃないですか?

笹田:おとなしそうな学生の男の子がよく来てくれるようになったり、京大生の女の子でコーヒーにはまってくれて、来るたびに自分でもコーヒーの知識を仕入れていたりするのはすごく嬉しいですね。

森本:コーヒーの魅力、伝えられてるじゃないですか笑

:コーヒーに詳しくない人や初めての人がパブリックカッピングのイベントにも来てくれたりしますね。それは「コーヒーを伝える」という意味で、いいことだと思っています。

事前に用意されていて、まだ答えていない質問に、「コーヒー屋で働く醍醐味」って言うのがあったと思うんだけど、コーヒーを通して人と関わると、近い距離感でお話ができるんですよね。プライベートの話をしやすかったりとか。コーヒーを飲みながら悩みを話してくれる人とかもいて、結構ここはお悩み相談室みたいになることもあるんですよね。そういうのも距離感の近さがないとできないですもんね。

笹田:コーヒー1杯500円くらいなら話をしに行きやすいし、
テイクアウトなら学生は半額ですからね笑

 

学生はテイクアウトが半額になる素敵なサービスも

 

:この店では自分自身も、あまり気取らずにいられるんです。プロ意識も持ちつつだけど、あまり仕事モードって感じにならずに素の自分でいられる。だからこそ、人間的に成長できるというか、「社会人として」ではなく、もっと人間臭い関わりのなかで成長できると思う。だから僕はこの一年だけでも人として成長したなと思っています。

笹田:今プロ意識って言葉があったけど、新年に吉祥寺店の相原さんが言っていたことで、「バリスタは今まで繋いできた最後のバトンを渡す橋渡しだ。僕たちがその価値を持って提供できなければ、僕らのやっていることは意味がない」という言葉があって、とても感銘を受けました。農園からいろんな人が回してきたバトンがあって、それを最後にお客さんに渡すのが僕たちバリスタという職業で、それを忘れないことがプロ意識にもつながるなあって。

森本:コーヒーってチームワークなんですね。会ったことのない人とのチームかもしれないけれど。

笹田:そういう繋がりとか背景があることを意識しながらコーヒーを淹れる大切さもありつつ、でもそれを前にも出さずにリラックスしてお客さんと関わることも大事なんですよね。そういえば相原さんと末さんはたしか同い年でしたよね?

森本:末さん今いくつでしたっけ?

:今25でもうすぐ26になるよ。2月生まれ。

森本:じゃあ僕らと同じ92年生まれなんですね。

:でもよく学生アルバイトに間違えられるよ。
「同志社生ですか?って」(笑)

森本:でもそういう親しみやすさっていいですよね。

:バトンを渡すっていうのも、お客さんに入ってこなかったら意味がないし、そういう意味では親しみやすさは絶対大事ですね(笑)

 

 

インタビューが始まる前「僕は薄っぺらい人間なので、お手柔らかに。」と言って謙遜していた末さんだけど、末さんのなかにはコーヒーをめぐる思想があふれていて、僕は以前、笹田くんがコーヒーについて楽しそうに話してくれた時と同じくらい、その話に引き込まれていた。

「人としてお客さんと関わることが何より大切で、それができたらコーヒーでなくてもいい」という末さんの話は少し意外だった。けれど、人間臭い関わりを大事にするする末さんだからこそ、こんなにも「また会って話したい」と思えるのかもしれない。

近くに住んでいる人はぜひ、LIGHT UP COFFEE KYOTOに足を運んで、そのスタッフと話をしてみてほしい。
知らなかったコーヒーの世界に引き込まれて戻ってこれなくなるかもしれないけれど、きっとその世界はあなたをワクワクさせるから。

 

LIGHT UP COFFEE KYOTO

 

住所:京都府京都市上京区青龍町252番地
アクセス:京阪・出町柳駅より徒歩1分、バス停・河原町今出川より徒歩1分
TEL:075-744-6195
営業時間:8:00~19:00
休業日:なし

2018年02月21日 | Posted in INTERVIEW | タグ: , , No Comments » 

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