コーヒーを味わい、表現し、共有する楽しさ。色に溢れるカッピングの世界へようこそ!

豊かな風味の色を感じられる”カッピング”

 

コーヒーは、さまざまな色に溢れていることをご存知でしょうか。

真夏に実るトマトのように弾けた赤い色。大地のように力強く、育った風土さえも感じさせるような茶色。熟したパイナップルのような甘い黄色。くすんだ、花のような香りを含んだ白色など。

もともとコーヒー豆とは、”コーヒーノキ”という木から生る果実の種子のこと。この果実のことを”コーヒーチェリー”と呼びます。見た目や構造はさくらんぼに似ているのですが、果肉や水分はそこまで多くはありません。熟したコーヒーチェリーはハネデューメロンのように甘いとも言われていますが、一般的にはシロップのようなほのかな甘さを感じさせてくれます。

 

 

このコーヒーチェリーから種子を取り出すさまざまな工程を”精製”と呼び、精製方法の違いや質がコーヒーの味わいに大きな変化をもたらします。それはまるで魔法のように、同じ品種、同じ土地で育てられたコーヒーチェリーでも精製方法の違い一つでイチゴのような風味になったり、爽やかな酸味のあるレモンの風味に変化したりするのです。

このようなフルーティーな風味を体験するためには、スペシャルティコーヒーと認定された、品質のよいコーヒー豆を適切に焙煎することが大切。中煎り~浅煎りで焙煎することで、コーヒーチェリーが育てられたその土地ならではの風味を明確に感じられるようになります。

コーヒーは、地域や標高、気候や品種などによっても味わいに大きな影響を与えるのですが、その栽培地域の特性のことを”テロワール”と呼んだりします。ワインなどでも良く耳にする言葉ですね。
深くまで焙煎してしまうと、焙煎による焼けたような味わいがネガティブな印象を与え、はっきりとこのテロワールを感じることが出来なくなってしまうのです。

とは言うものの、口にするだけで広がる様々な風味を捉え、言葉として表現できるのかというとそうではありません。
はじめてフルーティーなコーヒーを飲む方は、全然違う!ということはわかるものの、何が違うのかを言葉には出来ないことがほどんど。

今回はみなさんに気軽にコーヒーを楽しんでいただけるよう、どのような風味なのかを表現したり、コーヒーの色を感じるために行う”カッピング”という方法をご紹介します。

 

世界の誰とでも楽しめる共通言語

 

そもそもカッピングとは、コーヒーの品質をチェックするために行われます。ワインのテイスティングのようにコーヒーの”美味しさ”を様々な項目に分けて、そこでの品質の良し悪しを客観的に数的評価するときに採用される方法なのです。

方法はとっても簡単。挽いた粉に、あつあつのお湯をかけて4分間待つだけです。カップラーメンみたいですね。
コーヒーは湯温が高ければ高いほど多くの成分が抽出されるので、沸騰したお湯を浸すことで良い成分も悪い成分も全て抽出されます。このカッピングはコーヒーの産地や生産国で実際に行われており、抽出者による味わいのブレがなく、そのコーヒー豆の素材本来の味を伝えられるもっともシンプルな抽出方法です。

これは漬浸式と呼ばれ、昔ではノルウェーでも伝統的な方法であるスティーピングとして、現在ではフレンチプレスとしてご家庭でも簡単に楽しめるように普及しています。

 

 

カッピングをする目的は人(役割)によって異なり、大きく分けると4つの視点からカッピングを行っています。

1.グレードを決める審査(生産)
認定された国際審査員がスコアシートを用いて評価する際に行います。CQI(Coffee Quality Institute)がSCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)の定めた基準・手順に則ってコーヒーの評価ができると技術認定したものをQグレーダーと呼び、スコアシートによって80点以上を獲得したコーヒー豆のことをスペシャルティコーヒーという。
2.買い付け(焙煎)
コーヒーの生豆を買い付けるタイミングで行います。主に焙煎を行うロースターが、コーヒー豆の卸業者が行うカッピング会に参加し、どのような豆を買い付けるのかを確認するために行います。そのコーヒー本来のポテンシャルを見極め、どのような風味特性を焙煎によって引き出せるのかを考えます。また、ネガティブな印象があれば、それは生産工程の中でどのような点を改善すべきなのかフィードバックを行うことも。
3.バリスタ(抽出)
焙煎された状態から、抽出によってどのような味を引き出すのかを考えます。どうすれば風味特性が最大限に感じられつつ、毎日飲んでも飽きないようなすっきりとした味わいに抽出できるのか。もしカッピング時にネガティブな印象があれば、湯温を下げたり、挽き目を粗く調整し、いかに欠点を隠しながら美味しく抽出するのかをカッピングから抽出レシピを組み立てます。
4.風味の違いを楽しむ(消費者)
さまざまな”美味しさ”の基準の中から、”フレーバー”という項目を主に感じ取りながら、風味の違いを楽しみます。カッピングをする際は、まずこのコーヒーによる違いを理解することがとても大切です。回数を重ねるごとに、口当たりの違いや、余韻の質の違いなどフレーバー以外の部分もわかるようになってきます。

 

気づいた方もいらっしゃると思いますが、この4つの視点は、生産者からみなさんに届くまでの順番になっています。また1、2では生豆の質を、3、4では焙煎の質をチェックしていることにも気づくでしょう。

みんなそれぞれの視点からカッピングを行い、自分の役割というフィルターを通して感じる面白さはさまざま。そして、世界中の誰とでもこの”カッピング”という共通言語でコーヒーの話ができるのです。

では、どのような評価基準で”美味しさ”に点数をつけていくのでしょうか。
すこし覗いてみましょう。

 

スコアシートを用いた、”美味しさ”の評価基準とは

 

カッピングをする際に用いられる評価基準には大きく分けてSCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)方式と、COE(カップ・オブ・エクセレンス)方式の2つがあります。

SCAA方式の場合
“美味しさ”を分解した10項目10点満点で評価し、主にスペシャルティコーヒーとして認定すべきか、そうでないかを判断する際にこの方式が採用されます。
COE方式の場合
基礎点を36点とし、”美味しさ”を分解した8項目8点満点で評価し、主にスペシャルティコーヒーの中でも、トップレベルの採点評価を行う際にこの方式が採用されます。

COE方式では評価しない2つの項目は、アロマとユニフォーミティという項目です。

アロマはコーヒーの粉を挽いた時の香りのことを指します。ドライとも呼ばれるのですが、この項目はCOE方式の場合、どう感じたのかを書き込む欄はありますが、参考程度にされ加点対象としての評価は行いません。

ユニフォーミティとは、1つのサンプルにつき5つのカップの均等性を評価しています。収穫された生豆自体にある熟度の違いや、欠点が含まれていた場合、味のばらつきを感じてしまう原因になるのです。大きな味の違いが1カップ出るごとに2点減点していきます。

その他8項目についても順番に見て行きましょう。

 

1.フレーバー
これは、嗅覚と味覚で感じられる風味のこと。たくさんの風味を感じられるカップは複雑性が増し、高評価に繋がることもあります。温度変化によっても感じられるタイミングが違うので、どの温度帯でどのように感じたのかを書くと良いでしょう。
2.アフターテイスト
コーヒーを飲み込んだり、吐き捨てたあとに持続する風味のこと。どのように余韻として感じるのかを評価します。爽やかに消えるのか、甘さを伴って長く続くのか。もしくは、刺激的な嫌な感覚が残るのか。
3.アシディティ
酸の質を評価します。ここでの酸の強弱については、参考にはしますが加点減点対象ではありません。明るい酸なのか、重たい酸なのか。尖った酸味なのかを評価します。また、シトリック(オレンジやライムのような柑橘系)、マリック(リンゴ酸系)、タータリック(ブドウのような酒石酸・有機酸系)なのかなども判断できるとよいでしょう。
4.マウスフィール
口に含んだときの質感を評価します。「粘度」「密度」「濃さ」「重さ」「滑らかさ」「収斂性(口が渇くような感覚、渋さ)」がどのように感じるのかを記入します。主に特出して感じたものだけでも構いません。
(SCAA方式の場合、この項目は『ボディ』とされています)
5.バランス
フレーバー、アシディティ、ボディのバランスを評価します。風味の調和がとれているのか、何か突出していたり、足りなく感じるものはないかを探します。すべてが心地よく感じられるバランスであることが大切です。
6.クリーンカップ
欠点や雑味などがないかを評価します。また、そのコーヒーが育てられた地域ならではの風味特性がはっきりと感じられるのか、その透明性を判断します。
7.スイートネス
コーヒーチェリーの熟度による甘さを評価します。水 1 リットルに対して砂糖 5 グラムほどの甘さを感じるかどうかが一つの判断材料にされています。
8.オーバーオール
総合評価を点数にします。審査員の好みによる点数になることもあります。風味に奥行き、複雑さ、立体感があるのかどうか。また風味特性は感じられるが単調なのかなど。そのコーヒー豆に何かしらの購入価値を見出せると、高く評価されます。

 

いかがだったでしょうか。
これだけ”美味しさ”というのは複雑であり、全てを表現することはとても難しいと思います。ですが農家の方々にとっては、この評価によるスコアが生活に直接影響するのです。1年をかけて大切に育てたコーヒーチェリー。1点の違いが、その1年の価値を決めると言っても過言ではありません。

僕たちは実際に生産者の方々に対してスコアをつけたことはありません。ですが、たくさんの知識や経験を重ね、こうした心構えをしておくことが大切だと思っています。

また、風味による表現の仕方がわからないという方は、フレーバーホイールを参考にしてみると良いでしょう。

 

フレーバーホイールの中心部。全画面はこちらから

 

コーヒーから得られる情報を視覚化し、なんとなく感じとった抽象的な色からどんどんと細分化していきます。

例えばコーヒーを飲んだ際に赤色を連想したとしましょう。

それは、リンゴのような熟した赤色なのでしょうか。それとも重たい渋みのあるブドウのような紫色に近い赤なのでしょうか。また、薄く柔らかい桃のようなピンクに近い赤色だったのでしょうか。

中心から細分化し、明確な表現にしていく工程を、このフレーバーホイールが表してくれています。もちろんここにはない表現もたくさんありますので、はじめての方は自分なりの表現をしてみるのも一つの手だと思います。
独自の感性や、生まれ育った食文化が垣間見えるかも知れませんね。

さまざまな評価項目を見ながらカッピングしてみると、また奥深い面白さに出会えます。
ぜひ一度試してみてくださいね。

では、最後にカッピングの方法をご紹介します。

 

カッピングをしてみよう!

 

カッピングを行う際にもっとも大切なのは、全て同じ条件で揃えるということです。
カップによって使用するコーヒー豆の量や、湯温に違いがあると、等しく評価をすることができなくなってしまいます。複数のサンプルをカッピングする場合、できるだけ条件を合わせてあげることを心がけましょう。

1.粉を挽きます
カッピングで使用する湯量とコーヒー豆の割合は、 1Lに対して60gが適切だとされています。カッピングする際に用いるカップの大きさに合わせて調整してあげてくださいね。またこの時の挽き目は中粗引き(フレンチプレスと同じ)です。
※カッピング専用のカッピングボウルという商品も販売しております。

 

2.ドライの状態を確認する
粉を挽いた状態での香りを確認します。粉を注いだカップをゆすりながら、深く3秒ほど息を吸います。鼻を抜け、のどを通る際に感じるアロマがあれば記入しておきましょう。このときに感じる印象は、液体となったコーヒーでも同じ印象であることがあります。慣れてくるとこの時点で精製方法や、生産地のおよその見当が付きます。

 

挽き目はこのくらいを目安に。ゆっくり香りを確認してみよう

 

3.カップにお湯を注ぎます
沸騰したあつあつのお湯を、60g /1Lの割合で注ぎます。そしてここから4分間待ちます。この状態のことをクラストと呼びます。約1分間ほど経ったのち、顔を近づけて香りをもう一度確認してあげましょう。

 

満遍なく、全体の粉にかかるように注ぐ

 

4.ブレイクする
4分間経ったあと、待ってる間に出来たコーヒーの層を崩します。この時の工程をブレイクと呼び、スプーンでカップの底に向けて3回攪拌してあげましょう。このとき気をつけるポイントは攪拌する回数です。必ず全てのサンプルに対して同じように、同じ回数攪拌することが大切です。また、このときにも香りが立ち上がるので一緒に確認します。

 

必ず同じように攪拌しよう。下まで同じペースで3回まぜる

 

5.アクをとる
ほとんどのコーヒーの粉はブレイクのタイミングで下に沈みます。ですが微分やガスなどは液面に浮かんだ状態になっています。このままではコーヒーは飲めないので、上澄みをすくってあげましょう。

 

上澄みをスプーンで取り除く

 

6.適温になればカッピングスタート!
カッピングの際は、カッピングスプーンと呼ばれる専用のスプーンを用いる場合がほとんどです。底が深く、吸い込みやすい形状になっているのですが、なければ一般的なスプーンでも構いません。まだ温度が熱いとき、温かいとき、すこし冷めたときと温度変化によっても感じる味わいは変化するので、どのように変化していったのかを記入しておきましょう。

 

このくらいの液体をすくってカッピングしてみよう

 

このとき、勢い良く液体を吸い込むことが大切です。ただ飲み込むだけでは、風味を確認することは出来ません。強く吸い込み霧状にしてあげることで、鼻を抜ける香りと、舌で感じる味を立体的に感じることができるのです。風味は、嗅覚と味覚の両方で感じなければなりません。

コーヒーをすくったスプーンを下の歯にすこし当てながら、ずずっと吸い込みましょう。慣れてくると、シュイッという音になったり、ピュイッという音になります。(音が鳴ると上手というわけではありません)

また、できるだけ吸った液体は吐き出すように練習しましょう。慣れないうちは飲み込んでも良いかもしれませんが、1日に何十カップとカッピングをすることもあり、満腹状態での味の捉え方が変化したり、単純に気持ちが悪くなることもあるのです。コーヒーは捉えられる情報量が多く、吐き出したとしても上記の項目は感じられます。吐き出す場合でも、2秒ほどは口の中で転がしてあげると感じ取りやすくなると思います。

 

 

カッピングを行うことは、単にコーヒーの風味の違いを確認するだけではありません。味覚が繊細になると食生活も豊かになります。食べ物を食べる楽しみが増えるのです。

サラダを食べていると、無意識に「このサラダは梨みたいに瑞々しいな」と感じていたり、スーパーでは「グァバってジュースでしか飲んだことないけど、実際にはどんな味がするのかな」と興味が沸いてきます。

そうした楽しみから、だんだんとその背景にある「作り手」の姿が見える日がくるかもしれませんね。味覚が繊細になることは、私たちの知らない世界への入り口につながっているのです。

せっかくだったら、コーヒーと一緒に楽しんでみませんか?

 

2018年05月09日 | Posted in COLUMN | タグ: , , , 2 Comments » 

関連記事